世界遺産候補(3)富岡製糸場・平泉
●富岡製糸場と絹産業遺跡群
絹(生糸)は、開国直後の日本においてお茶と並び、利益が期待された輸出品でした。群馬県富岡市にある「富岡製糸場」は、日本初の器械製糸工場です。明治5年(1872年)に操業を開始し、現在は約1万5千坪の敷地内に開設当時の繭倉庫、繰糸場など、煉瓦建造物が当時のままの姿で残っています。
平成17年(2005年)に「旧富岡製糸場」として国の史跡に指定され、翌年の平成18年(2006年)には、明治8年(1875年)以前の建造物が国の重要文化財として指定されました。
現在、この富岡製糸場およびそれに関連する絹産業遺跡群は世界遺産の暫定リストに登録(文化遺産)されています(2007年)。群馬県は富岡製糸場を中心とするこれらの遺跡群の世界遺産登録に向けて、「富岡製糸場 世界遺産登録推進委員会」を設置し、遺跡の各種調査、研究、およびPR活動を行っています。
たとえば、「富岡製糸場と絹産業遺跡群」を構成する数々の資産をバスで回るツアーの実施です。車内でビデオを上映し、普段は解説が行われないような資産についても現地で解説をするなど、一般に広くその資産の価値を伝え、理解を深めてもらおうという取り組みです。
また県政特別番組として、「富岡製糸場と絹産業遺跡群」を構成する10の資産を5回シリーズの番組で紹介する活動も行っています。さらに富岡製糸場世界遺産伝道師協会と連係して講座を開催するなど、広報活動も展開しています。
まさに地域あげての活動は、世界遺産およびその候補の物件を有する地域が自らの資産の価値を再確認し、誇りをもって維持していくきっかけとなっていると思います。
●平泉の文化遺産
岩手県平泉は、平安時代末期、奥州藤原氏四代が約100年にわたって文化を築いてきた地です。都の文化を受容しながら、仏教寺院・浄土庭園など、独自の文化を発達させました。平泉の文化遺産は、平成13年に「暫定リスト」に登録されました。岩手県では、平成20年の世界遺産登録を目指してさまざまな運動に取り組んでいます。
藤原氏の文化としてまず思い浮かべるのは、中尊寺でしょう。天台宗特有の一山寺院です。850年に慈覚大師円仁によって開山されたと伝えられます。その後、奥州藤原氏の初代清衡が本拠地を平泉に移し造営したのです。大長寿院は高さ15メートルという大きな建物で、中には高さ9メートルの阿弥陀如像が本尊として祀られています。平泉を侵攻した源頼朝が、大長寿院をみて驚き、鎌倉に永福寺を建てたといわれています。清衡は数々の大伽藍を建立し、1124年に金色堂を完成させました。金色堂は国宝となっています。他に類を見ない、平泉文化独自のものです。
中尊寺と同様、平泉文化を代表するのが、毛越寺です。中尊寺と同じ、慈覚大師円仁に開山されたと伝えられています。当時はお堂や塔が40以上、僧侶の生活する建物が500以上、という大きなものでしたが、火災により当時の建物は残っていません。大泉が池は海岸の美しさを表したもので、現在のものは発掘調査によって復元整備されました。平安時代の庭園造りの秘伝書『作庭記』に忠実に作られたものです。遣水が緩やかに蛇行し、この世の極楽浄土のようです。特別名勝の指定を受けています。
その他、倉町遺跡、金鶏山、柳之御所遺跡など、平泉の文化遺産は奥深い魅力を誇っています。すでに世界遺産に登録された京都や奈良に続き、奥州の独自の文化として是非、世界遺産への登録が実現することを願います。