世界遺産候補(4)彦根城・小笠原諸島・富士山
●彦根城
「彦根城」は、滋賀県彦根市にある国宝の城です。現在ユネスコの文化遺産に登録されている「姫路城」と並び、国宝に指定されています。また国の特別史跡でもあります。1992年に日本の世界遺産暫定リストに登録されました。
彦根城は、地理的には湖と山の間の狭い平地に立地し、東国と西国の結節点に位置します。そのため、壬申の乱、姉川の戦い、賤が岳の戦い、関が原の戦いといった、日本史上重要な合戦が古来からこの地域で勃発しており、城郭は戦略の重要な拠点となってきました。豊臣秀吉が石田光成を、徳川家康が井伊直正をそれぞれこの地に配したのも、その地理的な重要性からです。また幕末の大老、井伊直弼は藩主となるまでの青春時代をこの城下町で過ごしています。直弼がその不遇の時代をすごした屋敷は、「埋木舎(うもれぎのや)」として現存しています。
彦根城は、江戸時代以前に建造された天守をもつ城郭の1つです。そのような天守は、日本全国に12箇所しか現存していません。城は、連郭式平山城という形式をとります。城の北側には、国の名勝として指定された玄宮園・楽々園という大名庭園が配されています。
国宝に指定されている天守をはじめとして国の重要文化財に指定されているものが多く、重要文化財としては珍しい馬屋もあります。
数多くの映画やドラマのロケ地として利用されたことで、知っている方も多いのではないでしょうか。たとえば、『武士の一分』や『大奥』にも登場しています。2006年には、日本の100名城の50番目にも選定されました。
●小笠原諸島
小笠原諸島は、太平洋上にある総面積104?2の島々です。東京から約1000?です。小笠原諸島は聟島列島、父島列島、母島列島を含む小笠原群島と、西ノ島、火山列島を指す、南方諸島のほか、南鳥島、沖ノ鳥島といった孤立した島々からなります。父島、母島、硫黄島、南鳥島以外は、無人島です。もっとも、硫黄島、南鳥島に常駐しているのは、自衛隊、気象庁、海上保安庁の関係者のみで一般の住民は父島と母島に居住しています。
小笠原諸島は、生命誕生以来ずっと大陸から隔絶してきたという歴史を持ちます。そのため「東洋のガラパゴス」と呼ばれているほど、島の生物は独自の進化を遂げています。たとえば、オガサワラオオコウモリやオガサワラノスリなどの動物、ムニンツツジ、ムニンボタンといった植物など、固有種が見られます。しかし、人間が持ち込んだ生物や島の開発で、これらの動植物は絶滅の危機に瀕しているのです。
気候は亜熱帯と熱帯に属します。聟島列島、父島列島、母島列島、西ノ島は亜熱帯、火山列島、南鳥島、沖ノ鳥島は熱帯です。夏と冬の気温差は少なく、年間を通じて温暖な気候です。梅雨はありませんが、台風は年中来ます。
文化的にも非常に興味深く、欧米系住民が話していた英語のフレーズと日本語の八丈方言、さらに日本語の標準語が混じりあい、独自の方言を生み出しています。「小笠原方言」と呼ばれます。また、民俗的にも日本的なものと、ミクロネシア系のものが共存します。2000年に東京都指定の民俗文化財となった「南洋踊り」はミクロネシアの影響を受けた民謡です。
小笠原諸島は、ユネスコの世界遺産のなかの自然遺産登録を目指し、暫定リストに登録されています。知床、白神山地、屋久島に続く4番目の自然遺産として登録される日が待たれます。
●富士山
静岡県と山梨県にまたがる富士山は、日本最高峰の山です。立山、白山と並び、日本三霊山(日本三名山)のひとつに数えられ、日本百名山のひとつでもあります。標高3,776mの活火山である富士山は、1990年代初めからユネスコの世界遺産への登録を目指し、運動が展開されてきました。当初は自然遺産への登録が検討されていましたが、環境の管理が困難であることから国の推薦は見送られることになりました。しかし、現在では文化遺産への登録を目指し、2007年に暫定リストに登録されました。今後、ユネスコの世界文化遺産の調査を行う記念物遺跡会議による審査を受ける予定です。
世界遺産については登録待ち状態ですが、すでに「富士山」は1952年には文化財保護法により「特別名勝」に指定されています。名勝とは景色の良い土地ということです。また「富士山原始林」は1929年に天然記念物に指定されています。さらに「富士風穴」も1929年に天然記念物に指定されました。
何より、富士山はその伏流水を利用した周辺地域の経済にはなくてはならない存在です。周辺地域では、製紙業や医療関連の製造業が活発に行われているのです。富士山の伏流水はバナジウムを豊富に含んでいることから、ミネラルウォーターとして販売されています。また、富士山一帯には宗教施設も多く、その参拝や避暑、登山などに訪れる人たちを相手にした観光業も地域の経済を支える重要な柱なのです。
富士山の自然遺産登録をめぐっても、自然・文化保護を重視する静岡県側と、観光開発を重視する山梨県側で意見の食い違いが起こりました。富士山有料道路のマイカー規制や、富士登山客のごみ問題などの問題が続いています。
万葉の時代から歌にも詠まれてきた富士山です。是非とも、世界遺産として認められてほしいと願います。